入学願い ADMISSIONS

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しぶい
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名門高校長のビルとその高校の入学事務所長を務めるシェリーは、白人夫婦だ。そして二人にはその高校で進学をひかえる優秀な息子、チャーリーがいる。物語はこの3人を軸に繰りひろげられる。

舞台は入学事務所長のオフィスから始まる。シェリーと編集担当者は、入学案内に載せる写真を吟味している。今度の新入生の人種配分を、人口比率を反映したものにすることが、リベラルなシェリーの目標だ。つまり米国社会で人種的優遇措置、あるいは積極的優遇措置と呼ばれているものの実現を目指しているのだ。そのために写真に映る黒人をより黒人っぽく見せたり、学校生活を楽しく送っている様子を強調して、有色人種など少数民族の入学願書を増やせないか検討している。

あらすじ&コメント

一方息子のチャーリーは、申請をしていたイェール大学から補欠入学の通知を受取り呆然とする。家族付き合いして、一緒に申請した親友には入学通知が届いていたからだ。彼はその理由に思いを廻らす。親友の母親ジニーは白人だが、父親は黒人。だから自分は、成績が良かったのに補欠になったのではないか。つまり背景にイェール大の人種的優遇措置があったのではないか、と考えたのである。

チャーリーは、母シェリーと父ビルに訴える。「今回だけじゃない。以前にも高校新聞の編集長に立候補した時、先生は別の女生徒を選んだんだ。誰が見ても僕の方が適任だったのに。僕は黒人や女性に対して一度だって差別をしたことなんかない。なのに何故僕がその報いを受けなきゃならないんだ。僕はユダヤ人だからって優遇されたことなんか一度もない。ユダヤ人だって差別されてきた歴史があるのに・・だよ。白人だからって後ろめたさを感じなければならない今のリベラル思想には、本当に嫌気がさす。」

そんなチャーリーをビルは叱るのだった。「何一つ不自由なく育ててきたつもりだ。なのにお前は他人を羨む甘えた人間になってしまったのか・・・。」

ある日、親友の母ジニーが家に遊びに来る。顔を合わせたくないチャーリーは、さっと部屋を出て行ってしまう。が、それを見てジニーはシェリーに向かって言う。「あなたもチャーリーもきっと思っているのね。黒人だから私の息子がイェール大に入れたのだと。私の黒人の夫は、あなたの旦那さんと教師としてこの高校に入った。そして 同じ資格を持っていた。でも私の夫は校長にはなれなかった。そして今もただの教師よ。どうしてだと思う。それに第一、私の息子は申込書の「黒人」の欄に印をつけなかったかも知れないじゃない。そんなこと、分からないでしょ」。そう言い残してジニーは去って行く。

その後もチャーリーは補欠だったことを考え続け、やがて通知が来た直後の自分の考えを反省し、決断する。これまで差別を許してこなかった自分の信念を貫き、自分のできることを、他人に強制せずに行なおうと。そのためにすべての入学申請をキャンセルする。つまり自分が入学するであろう名門校の籍を、他の恵まれない生徒達に譲るのだ。そして自分は短大に行くことにする。彼は「綺麗ごとを唱えても、自分がその為の苦労を被る覚悟がなければ、単なる偽善者だ」と気付いたのだ。

しかし息子チャーリーがイェール大に行けないことには我慢したシェリーとビルだったが、この決断には慌てる。そしてなんとかコネを使って他の名門大学に行かせようと躍起になるのだった。自分達の高校にやっと20%の少数民族を入学させることができて乾杯したばかりだったのだが…..。

アメリカという人種の坩堝の中で、不平等を唱える黒人や女性を優遇させるという理想論は何を意味するのか。リベラルな人々が唱える人種差別や男女格差がない社会とは、コネやお金で自分達は何とかなることが前提の綺麗事ではないかと、問いかける。確かに作品として、差別される側の言い分は描きやすい。誰もが正義を唱える慈悲深い脚本だと思ってくれる。しかしその反対の作品は、なかなか受け入れられない。にも関わらず、この面倒な題材にチャレンジしたジョシュア・ハーマンの勇気と、その切れ味のいいセリフに感嘆する。 人種差別や男女格差に対するアメリカ人の異常なほどの神経質さは、異民族が比較的少ない社会で暮らす日本人には理解しにくいところもある。しかし真の意味かどうかは別にして、逆差別が日本でも話題になりつつある。その意味でこの作品は、多くの課題を観る人に投げかけてくる。

4/29/2018

メディア評

NY Times: 8
Time Out NY: 8
The Hollywood Reporter : 8

Lincoln Center Mitzi E. Newhouse Theater
150 W. 65th St.

公演時間:1時間45分(休憩なし)

舞台セット ★★★★★
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★☆
総合 ★★★★★

Photos by Jeremy Daniel

Photos by Jeremy Daniel

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