回転木馬 Carousel

回転木馬 Carousel

話題性あり
回転木馬 Carousel
回転木馬 Carousel

1945年に初演されて絶賛を浴びた『回転木馬』が、ブロードウェイで5度目のリバイバルとして始まった。ロジャース&ハマースタインのゴールデンコンビが制作して、アグネス・デ=ミルが振り付けたこの作品は、当時、それまではほとんどなかったバレエ・シーンを導入。ダンスの役割を全面に出してセンセーションを巻き起こしたのだが、今回注目したいのは、その確立された歴史的位置付けを壊すことなく、ジャック・オブライエンによる演出の元、振付師ジャスティン・ペックが革新的に作り直したところだ。

あらすじ&コメント

ジャスティン・ペックはこれまで、パリ・オペラ座、サンフランシスコ・バレエ団、ヒューストン・バレエ団で30年にわたる経験を積んできており、現在、ニューヨーク・シティー・バレエ団に籍を置く振付師だ。今回の作品では、それまで大道具だった回転木馬をダンスによって表現するなど、バレエの流れを汲む斬新な試みによる振り付けが光っている。そのおかげで初演から70余年という時の流れを感じることは全くない。

舞台の視聴覚効果だが、さすがと言いたい。トミー賞に17回もノミネートもされた上に、舞台装置部門で1度、衣装部門で3度受賞したサント・ロクアストが、華麗な舞台に仕上げている。

その舞台上で主役ビリーを演じるのは、2011年の「キャッチ・ミー・ユー・キャン」に続いて本作品でもトニー賞にノミネートされた、黒人のジョシュア・ヘンリーだ。

肌の色などによる差別を無くそうという意図によるこのような配役は、今年になってからだけでも『ジャンヌ』のジョウン役コンドーラ・ラシャドや、『ハリー・ポッターと呪いの子』のハーマイオニー役ノーマ・ドゥメズウェニがあり、ブロードウェイ発信のメッセージとして定着しつつある。ただこの試みは、ときに話のスジに不整合が生じ戸惑いを憶えるのだが、本作品にはそんな違和感がない。ジョシュア・ヘンリーが、短気で冷静に判断できない主役ビリーを、上手に演じているからだ。

今年のトニー賞には『回転木馬』に出演した5人がノミネートされているが、中でもこの主役ジョシュア・ヘンリーと、ヒロインのジェシー・ミューラー、そして彼女のいとこ役のルネ・フレミングの3人の歌唱力が際立っている。ジェシー・ミューラーは、2016年にトニー賞主演女優賞を『ビューティフル』で受賞した時よりも一段と歌唱力が増している。またルネ・フレミングはオペラ界では言わずと知れたアメリカが誇る59歳のソプラノ歌手だが、円熟味を味方につけ、いまやその声に敵う者がいないことを思い知らせてくれる。

ビリーを犯罪に誘う悪友ジガー役のアマー・ラマサーは、元ニューヨーク・シティー・バレエ団のプリンシパル。当然ながら踊りが上手いので、これだけでも見応えがある。その上歌唱力と演技力が備わった現在は、ミュージカルには欠かせない存在となりつつある。

バレエ・トレーニングを十分に受けたことが一目でわかる他のアンサンブル・ダンサー達も、バランス良くアマー・ラマサーを引き立てている。

まさに歌、踊り、劇をこれほど熟せる(こなせる)人達で作品が作れるのは、歌手、ダンサー、俳優が世界中から集まり、層の厚いニューヨークだからこそだ。今のオリジナル・キャストとダンサーが出ている内にご覧になることをお薦めしたい。

ただミュージカルなのでストーリー展開に追いつけないところがあるかもしれない。しかし想像力を働かせれば十分についていけるはず。「こういうことなんだ、きっと。」と考えさせられるのも、脚本の一部と思って楽しみたい。

メディア評

NY Times: 9
Wall Street: 7
Variety : 9

Imperial Theater
252 W. 45th St.

公演時間:2時間45分(15分の休憩含む)

舞台セット ★★★★★
作詞作曲 ★★★★★
振り付け ★★★★★
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★★
総合 ★★★★★

Photo by Julieta Cervantes

Photo by Julieta Cervantes

Photo by Julieta Cervantes

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