ガラスの動物園 The Glass Menagerie(上演終了)

ガラスの動物園 The Glass Menagerie(上演終了)

マニア向け
ガラスの動物園 The Glass Menagerie(上演終了)
ガラスの動物園 The Glass Menagerie(上演終了)

1945年にブロードウェイで初上演された『ガラスの動物園』は、世界的に有名なアメリカの劇作家テネシー・ウィリアムズの代表作のひとつ。ウィリアムズの出世作でもあり、自らの回想記の要素があると言われている。登場人物は、家族を養うために靴会社の倉庫で働くトム、足が不自由な姉のローラ、過去の栄光と理想にとらわれている母アマンダ、そしてトムが姉に合わせようと家に呼んだ 同僚のジムだ。

コメント

作品名の「Menagerie」 は「動物園」の「Zoo」とは違う。Zooは場所のことを指すが Menagerie はいろいろな種類の動物や人間の集団、またはその収集を指す。珍しい動物を集めたりする大金持ちや、珍獣を町々に連れて行って見世物にする文化が日本にはあまりなかったので、日本語にはそれにあたるものがない。ちなみに作品中では、ローラがガラスでできた小さい動物を収集しており、その中の一角獣のユニコーンは彼女のお気に入りだった。しかしジム・オコナーが誤ってユニコーンを落としてしまい、角が折れて普通のガラスの馬になってしまう。

トム役は俳優業だけではなく人気ブロードウェイミュージカル『ウィキッド』などの 演出家としても活躍し、トニー賞演出賞を2度受賞しているジョー・マンテロ、母アマンダ役も2度のアカデミー賞受賞経験のある女優サリー・フィールド、姉のローラ役は25歳のマディソン・フェリスが演じている。皆、役者としては申し分ない。しかし、ジョー・マンテロは怒りを強く感じさせる役者で役柄が合えば最高だが、今回のトム役の何層にもなっている複雑な感情や葛藤が今一伝わってこない。ローラ役のマディソン・フェリスは筋ジストロフィーを患っており、立ち上がることも歩くこともできないので、車椅子から降りてくる彼女を見て観客は驚いたことだろう。身体障害にも関わらずブロードウェイに出演したことは意味があるとも思うが、観客は彼女を観ながら頭の中で、最初は「本当の身体障害者なのだろうか。いや演技だろう…?」から始まり「こんな機会を与えたのは素晴らしい」とか「彼女は普通の人のようには笑えないんだ」など忙しく考えたことだろう。当然意識は作品ではなく、そちらに削がれていた。そして、必ずしもそれにそぐわない 箇所の台詞もいくつかあった。更に、彼女の着ていた服は、その障害やそれによる奇形を目立たすようにデザインされていたと思う。極端に短いショートパンツ、襟が大きく開いた丈の短いセーター、そして丈の長いドレスを着ても、ローラが極度の恥ずかしがり屋であるにもかかわらず、わざと腿まで上げていた。演出家が彼女を見世物にしようとしたとは全く思わないが、少なくとも「彼女は本当の障害者だ」と観客に強調したかったのは確かだろう。耳の聴こえない役実際の障害者達を起用して素晴らしい作品に仕立ててトニー賞にノミネートされた2015年の『春のめざめ』のリバイバルとは違う。少数を尊重しようとする慈善の気持ちは、どこまで他人に強要することが許されるのだろうか。役者とは、どこまでも作品を生かすための存在ではないだろうか、と問いかけたくなる舞台だった。

メディア評

NY Times: 6
Time Out: 7
Variety: 9

Belasco Theatre
111 W. 44th St.
尺:2時間5分(休憩なし)

舞台セット ★★★★★
衣装 ★★★☆☆
照明 ★★★★☆
総合 ★★★☆☆

Photo by Julieta Cervantes

Photo by Julieta Cervantes

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