死ぬほど、会いたい MISS YOU LIKE HELL

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オフ・ブロードウェイ 話題性あり
死ぬほど、会いたい MISS YOU LIKE HELL
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上演劇場がオフ・ブロードウェイのパブリックシアターという事実だけでも期待が募る新作。同じ劇場での上演を経てブロードウェイの大劇場に昇格したミュージカル『ハミルトン』と『ファン・ホーム』が、過去3年のトニー賞でいずれも最優秀ミュージカル作品賞を獲得していることが記憶に新しいからだ。 残念ながら今回は同様の出世コースをすぐに辿ることはなさそうだが、この春に登場したオフ・ブロードウェイのミュージカルでは注目を集めるヒット作となった。

あらすじ&コメント

主人公は40代の母親と16歳の娘の二人。仲たがいしていた母娘が車での旅に出て、その道中で人々と出会い、互いに成長し理解を深めていくというロードムービーのような流れが大筋。そうした中、二人の置かれた立場がこの作品の要となっており、移民問題という今のアメリカ社会の動きにも敏感な一捻りある作品に仕上がっている。

母親はメキシコからの移民で、アメリカ人男性と娘をもうけた。ところが、男性とは籍を入れないまま離別し、さらには前科があることから、強制送還の危機にある。それを免れるには米国民の娘が嘆願し裁判官を納得させる必要があるのだ。長く離れて暮らしてきた母親と娘の軋轢は深く、互いに距離を置いてきたためのすれ違いが繰り返される。その溝を埋めることの難しさと二人の葛藤、そして法により引き裂かれる親子の将来という差し迫った問題が同時に描かれていく。

脚本は、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』を手がけ、戯曲作家としてもピューリッツアー受賞経験のあるキアラ・アレグリア・ヒュデス。作曲はシンガーソングライターのエリン・マッケオン。そして演出は昨今の活躍がめざましいリア・デベソネイ。つまり女性製作チームによる、リアリティのある女性二人を描いた価値がある貴重な作品なのだ。

一方で、冒頭から結末が示唆されているため、そこに至るまでの休憩なしの上演時間およそ100分が多少長く感じるのは否めない。同時に、親子の過去があまりにも曖昧な描写というのは今後の手直しの大きな課題でもある。

因みに、このミュージカルは2016年の秋に米カリフォルニア州のサンディエゴにある名門地方劇場ラ・ホヤ・プレイハウスで上演されている。およそ2年前のちょうどその頃、アメリカでは大統領選挙が行われ、政権交代が決まった。大統領選の結果と、同作品の内容を踏まえ、当時のLAタイムズ紙は「トランプ時代の移民ミュージカル(immigration musical for the new Trump era)」と題した劇評を発表する。 移民政策の変化が顕著になってきた現在のニューヨーク初演では、更にタイムリーに制作された作品と捉えられることとなった。ところが、実際は時代の流れに上演のタイミングを重ねたというだけのこと。物語の時代設定は2014年のことなので、当時と現在とでは登場人物たちが置かれた状況の切迫感には、かなりの違いがあるのが事実。

このように、現アメリカ政権にかかわる内容だと受け止められながらも、実際には意図したことではなく、偶然だったという演目がこの2年のアメリカ演劇界に多々ある。移民に仕事を奪われ貧困に喘ぐ米地方都市のブルーカラーに迫り、昨年ピューリッツアー賞に輝いた『スウェット』がその筆頭。ブロードウェイでロングラン中のミュージカル『カム・フロム・アウェイ』や『迷子の警察音楽隊』が人種や宗教の違いなどの壁を越えた“時の作品”といった捉え方をされ支持を得ている。

だからこそ、ミュージカル『ミス・ユー・ライク・ヘル』も作品の優劣に関わりなく、内容だけで前売りチケットの売り上げが好調だった。今後もこうした類の作品は、意図的な例も含めて増え続けることが予想される。

4/18/18

メディア評

NY Times: 7
Wall Street Journal : 9
Variety : 6

Public Theater – Newman Theater
425 Lafayette St.

公演時間:1時間45分(休憩なし)

舞台セット ★★★★☆
作詞作曲  ★★★★★
振り付け ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★★
総合 ★★★★☆

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