スキンタイト SKINTIGHT

スキンタイト SKINTIGHT

オフ・ブロードウェイ 話題性あり
スキンタイト SKINTIGHT
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この夏、オフ・ブロードウェイで注目を集めるストレートプレイが『スキンタイト』。ミュージカル『レント』や『ウィキッド』の初演キャストとして圧倒的な歌唱力を披露し、映画『アナと雪の女王』のエルサの声を担当したことでも知られるイディナ・メンゼルが主演する新作戯曲だ。大ヒット曲「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」で世界的に知名度を高めた歌姫の彼女が、ミュージカルではなく演劇作品に出演するという珍しい機会だけに、自ずと関心が高まった。

あらすじ&コメント

この戯曲の作者ジョシュア・ハーモンは、今年のドラマ・デスク賞で小規模なことから過小評価される傾向にあるオフ・ブロードウェイ作品でありながらも、最優秀演劇作品賞に輝いた『アドミッションズ』も書いている。同性愛や人種問題といったテーマと向き合い、そこに皮肉たっぷりの人間ドラマを加味する人気劇作家の新作というがもう一つの売りだ。

舞台はニューヨークのマンハッタンにある高級タウンハウス。ここに住む世界的に有名なユダヤ系の服飾デザイナーの父親エリオットを、イディナ・メンゼル演じる40代半ばの娘ジョディがロサンゼルスから突然訪問してくるところから幕が開く。父親エリオットの70歳の誕生を一緒に祝うために訪れたという娘ジョディ。しかしそれは建前で、彼女の離婚した夫が24歳の若い女性と再婚することとなり、その憤りを父親に訴えて慰めてもらうために来たのだ。

ところが、そこで彼女が出会うのは父親のパートナーだという肉体美の整った20歳のハンサムな青年トレイ。45万ドルもするロレックスの腕時計を買い与えてもらい、父親と同棲する青年トレイの存在や振る舞いに唖然とするジョディ。そこにやって来るもう一人の訪問者がジョディの息子で同性愛者のベンジャミン。股間を強調したジョックストラップの下着一枚の姿で家中を歩き回る同じ年齢のトレイに、ベンジャミンはつい心を奪われてしまうのだ。それによりベンジャミンと、彼の祖父エリオットとの間にも確執が生まれてしまう始末。さらには青年トレイが過去にポルノに出演した経験があることも発覚、不穏な空気の中でジョディは父親エリオットの誕生日を祝うことになってしまう。

祝いの席でもジョディにとってのサプライズが続く。パートナーの青年トレイが父親エリオットに結婚をプロポーズするのだ。プロポーズを受け入れる父親を強く非難する娘ジョディ。トレイは金目的で結婚をしたいだけで、そこに愛は成立していないのだと父親の説得を試みるが効果はない。父親は、青年トレイがもし自分の資産を目的としてそれを愛しているのなら、それでも構わないと反論。さらには、老いを日々切実に感じる自分にとって、若くて性欲に満ちたトレイの隣に寄り添って毎朝目覚めることができるのなら、それを望みたいのだと娘ジョディに言い放つのだった。

劇中の父親のモデルとなっているのはデザイナーのカルバン・クライン。彼がボーイフレンドとしてポルノ出身のモデルを連れ添い芸能ニュースを賑わせた2010年の出来事が下敷きとなっている。作品名「スキンタイト」は、肌にぴったりとした下着のデザイナーとしてスタートしたカルバン・クラインや、若さの象徴での「タイトな肌」や、「Skin Tightening」と言えば肌をぴっちりさせる整形手術のことだったりなど、それらすべてを示唆している。

劇中、デザイナーの父親に一人娘がいるというのも現実味のある設定だ。更には中盤、青年トレイが同性愛者かと訊かれ、それに対して自分はラベルを貼られたくなく、どちらでもないと答える。これも前述のデザイナーのボーイフレンドとして注目されたモデルが、報道から5年後に女性と結婚して再び話題を振りまいたという事実にヒントを得ているようだ。

吹き抜けの洗練されたリビングルームの舞台装置は灰色の階段が目を引くが、これも同デザイナーが1985年に発表した香水の宣伝で使われた絵柄を彷彿とさせるものとなっている。

このように、全体的にリアリティに富んだ作品となっているのが特徴だ。

イディナ・メンゼルにとっては初の本格的なストレートプレイ。持ち味の迫力のある歌声を披露する機会は一切ないが、トニー賞で主演女優賞を獲得しているだけに、テンションの高い体当たりの演技で魅せる。

同劇作家が過去に描いてきて得意とするユダヤ系や同性愛といった持ちネタを散りばめて有効活用したストレートプレイだが、それに加えて老いることへの恐れと取り組んだ姿勢は新鮮味がある。決して革新的ではないが、どちらかと言えば演劇作品で定番の問題を抱えた一家の暗い物語であるにもかかわらず、終始シニカルな笑いでコメディに仕上がっているのには好感が持てた。

ところで、この作品の最後は出演者たちが無言のまま食事をする場面で幕となる。出演者たちが実際にチキン・パイヤールの鶏肉料理を黙々と口へと運ぶこのクライマックスの直後のカーテンコールでは、なぜか彼らが食べ物を噛んで口を動かしたままで観客に応対。演出の意図なのかもしれないが、この奇妙な光景が非常に印象に残った。

上演開始:5月31日
初日:6月21日
千秋楽:8月26日

メディア評

NY Times: 6
Variety: 7
Time Out: 7

Laura Pels Theater
111 West 46th St
上演時間:2時間15分(15分の休憩含む)

舞台セット ★★★★☆
衣装 ★★★☆☆
照明 ★★★☆☆
総合 ★★★☆☆

Photo by Joan Marcus 2018

Photo by Joan Marcus 2018

Photo by Joan Marcus 2018

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