サンセット大通り Sunset Boulevard(上演終了)

サンセット大通り Sunset Boulevard(上演終了)

話題性あり
サンセット大通り Sunset Boulevard(上演終了)
サンセット大通り Sunset Boulevard(上演終了)

サイレント映画で一世を風靡した女優のノーマ・デズモンド。その時代は過ぎ、今は誰からも声がかからないにもかかわらず、サンセット大通りの豪華な大邸宅に、映画界へのカムバックの妄想を抱きながらひっそりと住んでいた。そこに売れない脚本家がある晩彷徨い込んでくる・・・。

コメント

アンドリュー・ロイド=ウェバーの代表作の『サンセット大通り』は、ビリー・ワイルダー監督の傑作とされている白黒映画の舞台化で、老優ノーマ・デズモンドを69歳のグレン・クローズが演じる。日本では、映画『危険な情事』や『ガープの世界』などでハリウッド大女優として知られているクローズだが、ブロードウェイでも舞台女優としても揺るぎのない地位に立っている。事実、20年以上前に『サンセット大通り』の初演でノーマ役を演じ、彼女にとっての3つ目のトニー主演女優賞を受けている。

今回は予算がなかったのか、舞台セットはかなり地味だ。初演の家の装置は巨大な黄金の宮殿で、そのお屋敷自体が役者を乗せたまま上昇して、その下にパーティー会場などの別の場面の舞台装置が登場するという、豪華な仕組みだったらしい。しかし、今回の地味なセットのおかげで、グレンが引きだっている、という評価もあるようだ。そして、オーケストラは40人という稀に見る大群で、コンサートのような音で聴けた。「With One Look」や「As If We Never Said Good Bye」のミュージカルナンバーにはうっとりとして、ロイド=ウェバーの才能に脱帽してしまう。しかし、作品を通して同じハーモニーを繰り返す手法には多少閉口した。メロディーが頭から離れないようにしたいのだろうが、「ここでもまたそれ?」と思う。

今回、グレン・クローズが保存していた22年前の初演の衣装に少し手を加えたのだとか。グレンは自分の出演作の衣装をその後所持して良い、という条件を契約書に入れることで業界では有名らしい。それだからか、有名なラストシーンで彼女が同じ衣装で出てきた時に、観客の中にざわめきがあった。そういう裏話を知っている初演を観ている彼女のファンがいるのだろう。

実はブロードウェイに先駆けた1993年のロンドンでの初演の際、最初にこの役に抜擢されたのは、パティ・ルポンだった。しかし、ロイド=ウェバーは彼女のことが気に入らず、クビにした。これは契約違反だと訴訟に発展。次に抜擢されたのが映画俳優のフェイ・ダナウェイだったが、歌えなさすぎると、今度は舞台に立つ前にクビ。再び訴訟に発展。3人目にグレン・クローズに白羽の矢が立ったのだが、ロイド=ウェバーは2つの訴訟で数億円の違約金を支払ったと言われている。初演のブロードウェイで、グレン・クローズの後を継いだのはその歌派のベティ・バックリーで、「演技力と歌唱力とが伴ったノーマ」と大絶賛された。しかし、グレン・クローズの音域に合わせるために楽曲のキーが一部下げられていたので、キーが低くて大変だったらしい。そこで、私はYouTubeでパティ、初演時の40歳のグレン、そして、ベティを聴き比べてみた。これは前から感じていたことだが、ルポンはすごい才能だが、声は美人ではない。なんか演歌っぽく、ドスがきいていて品を感じさせないため、実際よりもブスに見えるルポンだ。当たり役に決まれば、他の人には真似ができないが、ロイド=ウェバーの好みの女優たちを見ると、彼がルポンを降ろした理由もわかる。反面ベティの歌声は美人の声だ。品もあり頭が良さそうで分別のある感じが漂う。自分の夢に固執して終いには気がふれてしまう ノーマには見えない。 そしてグレン・・・さすがだ。彼女のノーマは哀れで気味悪く怖い。

今回の舞台では更に年を経た貫禄もついて、その演技で観客を引き込んでいく。フレッド・ジョンソンの演じる脚本家のジョーが今一だからか、グレンのいない舞台は、彼女の出番を待ちながらストーリーを追うだけだった。欲を言えば、ノーマが歌い上げる部分や声の張りを魅せる部分では、生の40歳のグレンを聴いてみたかった。グレンの初演のノーマがあまりに素晴らし過ぎた。それにしても、とにかく観客の拍手喝采は凄かった。グレン・クローズの長い功績を称えて、そして22年前の彼女が創り出したノーマに、そしてハリウッド大女優の『サンセット大通り』へのリターンへの歓迎を表したものだったのだろう。カーテンコールで何度も舞台袖から出てきて、その喝采を嬉しそうに受け止めていた彼女の姿が瞼に残る。

メディア評

NY Times: 8
Time Out : 7
Variety: 9

Palace Theatre
1564 Broadway & 47th Street
尺:2時間40分(休憩含む)

2017年6月25日閉演予定

舞台セット ★★★★☆
作詞作曲 ★★★★☆
振り付け ★★★★☆
衣装 ★★★★★
照明 ★★★★☆
総合 ★★★★★

©Joan Marcus 2017

©Joan Marcus 2017

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