ザ・ウェイバリー・ギャラリー The Waverly Gallery

ザ・ウェイバリー・ギャラリー The Waverly Gallery

話題性あり
ザ・ウェイバリー・ギャラリー The Waverly Gallery
ザ・ウェイバリー・ギャラリー The Waverly Gallery

祖母の晩年をモデルにして書いた劇作家ロナーガンの作品「The Waverly Gallery」が、ブロードウェイで再演されている。 2001年におけるオフ・ブロードウェイでの初演では、ピューリッツァー賞戯曲部門ファイナルに残ったこの作品を、今回は、ブロードウェイデビューとなる若手演出家ライラ・ニュージバウアー/Lila Neugebauerが演出を手掛けた。

あらすじ&コメント

物語はアルツハイマー病が進む祖母と家族の様子を、21歳の孫息子がナレーションする仕立てとなっている。
かつて弁護士だった祖母グラティスは、社会活動も積極的に行う話し上手な社交家だった。そんな彼女がリタイアした頃に始めたのは小さな展示館 The Waverly Gallery だった。だが当時は盛況だったThe Waverly Galleryも28年が経ち、今では訪れる客も稀になっていた。
ある日そこに無名の若き画家ドンが訪れる。そしてグラディスは彼の絵の展示を快く承諾する。そのうえギャラリーの裏で生活するのを許し、更に彼の無料展覧会開催も快諾するのだった。
傍に住むグラディスの娘家族のところに、ギャラリーが入るビルのオーナーより通知が届く。カフェに改造するので半年後に明け渡されたい、というのだった。
家族は驚き、最近の祖母グラティスの生活を思い心配する。 一日の大半を過ごしているギャラリーがなくなったら、祖母グラティスは大丈夫だろうか。この家で生活するのが一番いいが、痴呆が進むグラティスと一緒に生活できるのだろうか。それに独立心が強く一人暮らしを望む彼女が同意するだろうか。不安は尽きない。週に一度、グラディスと夕食を囲むのだが、その度に心配な事が増え不安を拭えない家族だった。

キャストは有名どころが揃った。 祖母グラディスをエレイン・メイ/Elaine Mayが演じる。往年のコメディアンで、脚本家、演出家、俳優として幅広く活躍してきた86歳の女優だ。ブロードウェイに戻ってくるのは半世紀ぶり。おしゃべりな役なので台本の量は相当だが、記憶力と声量には脱帽する。年齢を全く感じさせない。
グラディスの娘エレン役はジョアン・アレン/Joan Allen。トニー賞・主演女優賞を1回受賞している彼女の12年ぶりのブロードウェイとなる。映画ボーン・シリーズ 2~4(『ボーン・スプレマシー/The Bourne Supremacy 』(2004)、『ボーン・アルティメイタム/The Bourne Ultimatum 』(2007) 『ボーン・レガシー/The Bourne Legacy 』(2012))で、CIA内部捜査局員として主役ボーンと協調する難しい役を好演したので、知っている方もおられるだろう。
彼女の夫、つまりグラディスの娘婿となるハワード役は、デイビット・クローマー/David Cromer。演出家でもある彼は、昨年トニー・ミュージカル作品賞に輝いた『迷子の警察音楽隊/The Band’s Visit』(2018)で演出賞も受賞しており、今まさに注目の人だ。
物語の案内役でもある孫息子ダニエルを演じ、語るのは、ルーカス・ヘッジズ/Lucas Hedges。彼はケネス・ロナーガンの映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー/Manchester by the Sea』(2016)でアカデミー助演男優にノミネートされており、そのときの演技が、脚本のロナーガンや演出のライラ・ニュージバウアーの目に留まったのかもしれない。

日本でも米国でも高齢者人口が増える中、時宜に合ったテーマを取り扱っていると言える。
繰り返し同じことを訊くグラディスの所為で、家族の会話が空回りしていく様子が巧く描かれている。ただストーリー展開がギクシャクしていて、伏線として設定されたいくつかの物語は、煮え切らないまま終わってしまう。たとえば画家ドンの存在は、グラディスが利用されて酷い結果になるのではないかと不安にさせられる。だが単に、孫息子ダニエルとの対比のために登場している楽観的な人のようだ。また娘エレンの苦労は伝わってこない。それでグラディスに対する彼女の苛立ちは、ただの「優しくない娘」に映ってしまう。
アルツハイマー患者を持つ家族にとっての重要な選択肢である施設利用については、「彼女はそれは望んでいない」の一言で片付けられている。
ロナーガン脚本には2018年にブロードウェイで公演された『ロビー・ヒーロー/ Lobby Hero』があり、こちらは鋭く味のある作品だった。しかし『The Waverly Gallery』では、あの心を射抜く感触を得られなかった。オブラートに包んだようになんとなく生温い。アルツハイマー病ならもっと大変だろうと思う。
それともそれほど悪い症状ではなかった設定なのか。あるいは逆に、あまりに身近な題材で描くのが苦しかったのだろうか。

John Golden Theater
252 W. 45th St.
Closes: January 27, 2019

上演時間:2時間15分 (15分の休憩含む)
閉演予定:1月27日2019年

NY Times 9
Wall Street Journal 9
Variety 8

舞台セット ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★☆
総合 ★★★★☆

(c) Brigitte Lacombe

(c) Brigitte Lacombe

(c) Brigitte Lacombe

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