ノーノー・ボーイ No-No Boy

ノーノー・ボーイ No-No Boy

しぶい
ノーノー・ボーイ No-No Boy
ノーノー・ボーイ No-No Boy

米国の日系人強制収容所から志願入隊し、第二次世界大戦を戦った二世のジョン・オカダが、34歳の時に図書館の司書として働くかたわら上梓した同名の小説が、この劇の原作となっている。ジョン・オカダによる他の小説は見つかっていないので、1971年に47歳で亡くなった彼が世に出した唯一の小説となる。そこでは戦争により引き裂かれた日系アメリカ人の家族や友人達が、戦後も破壊されたアイデンティティーを修復できず足掻く様子が描かれている。小説は当初1500部印刷されただけだったが、オカダの没後、徐々に文学としての価値が認められ、現在では全世界で15万部を超えるロングセラーとなっている。

あらすじ&コメント

この作品は以前オフ・ブロードウェイで舞台化されているが、今回はアジア系アメリカ人俳優にも舞台に立てる機会を与えようと創立されたPan Asian Repertory Theater(パン・アジア・レパートリー・シアター)で演じられた。

主役のイチロー・ヤマダは、移民してきた一世を親に持つ日系二世。太平洋戦時下にあった米国政府は、日系アメリカ人を強制収容所に集め、適正試験を実施する。試験はいくつかの質問を通して行われ、適齢期の男性であれば兵役に就くこととなる。その主な質問は、米軍兵士として自主的に応聘するか、無条件に忠誠を誓えるか、合衆国を守るか、日本国天皇をはじめとした海外の権力・組織に対して服従はしないと誓えるか、といった内容で、これらの質問に一つでも「No」と答えると収監された。「No」と答えたイチローが2年の刑期を終えて故郷に戻ってきたところから舞台は、始まる。そこでイチローは戦争に参加した昔の友人や彼らを支援していた知り合いから、No-No Boyという裏切り者のレッテルを張られる。牢屋での辛い経験とそれに続く故郷での疎外感から、果たして自分の選択は正しかったのだろうか、と疑問を持ち、自分は日本人でもないしアメリカ人でもない。どちらのアイデンティティーも有さない無価値な人間なのだと思い悩む。大戦前に平穏な毎日を過ごしていた日系社会の隣人達は、真珠湾攻撃後に財産を没収されて強制収容所に入れられ、生活と人生を破壊されていた。イチローの母は日本が負けたことを受け入れられず、米国の勝利は全て陰謀に基づくウソだと頑なに信じ込んでいる。弟タローは、アメリカ人であることを立証するにはこれ以外の手段はないと、軍への入隊を決断。友人のケンジは収容所での適正試験にイエスと答えて戦争に赴いたが、銃に撃たれて足を切断。それが原因の病気と戦っている。イチローと同じように「No」を選択した友人もいるが、彼は酒と性の快楽に入り浸っていた。ある日、日本敗北という事実を突きつけられた母は自殺。ケンジも病気に勝てず死ぬ。

舞台上では主人公イチローや家族、知り合いなどの10人が、ステージ隅の椅子に座り、出番が来ると前面に出てきて演じる形式をとっている。俳優は全員がアジア系か日系アメリカ人。題材は面白い。しかしテーマは大きく、重く、深い。僅か90分で掘り下げるのは難しかったかも知れない。多くのアメリカ人は、日系アメリカ人を敵性人種として収容所に入れた歴史的事実を知らない。だからこそこのような作品が増えて欲しい。しかし弟タローの友人の怒りがストレートで爆発的で、なんとなく日系人らしくない。また間の取り方が短過ぎて不自然な個所も少なくなかった。アジア系アメリカ人の俳優が、当たり役として活躍できる芝居が少な過ぎる。場数を踏むことで得られる修練もあるだろう。技と場、どちらが原因でどちらが結果なのか。劇場を出て、そんなことも思いながら家路についた。

閉演: 2018年 2月28日

メディア評

Time Out : 5

Studio Theatre at Thea Time Out tre Row
410 W 42nd St (9-10 Aves)

公演時間:1時間30分(休憩なし)

舞台セット ★★★☆☆
衣装 ★★★☆☆
照明 ★★★☆☆
総合 ★★★☆☆

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